第四紀研究
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対馬暖流域の表層堆積物中における渦鞭毛藻シストの分布
松岡 数充
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1985 年 24 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

対馬暖流域における表層堆積物中の渦鞭毛藻シストの概略的な分布状況及び種多様性を調査した. また既存の資料を用いて他海域の種多様性も調べた. その結果は以下のようである.
1) 属レベルでの群集組成の変化では, Spiniferites 属は対馬海流の北上とともに相対頻度を減じ, Brigantedinium 属は逆に増加する傾向がある. 前者では主に Spin. bentori, Spin. bulloideus の消長が寄与している.
2) 種多様性の示標としてFISHERのα値を求めた. α値は6.0 (大村湾) から4.1 (加茂湖) で, 北大西洋海域のそれ〔3.4 (1.75) から4.8 (2.8)〕よりも大きく, とくに対馬暖流域の南方で種多様性が高い.
3) α値は夏季 (8月) 及び冬季 (2月) の表層海水温度分布と強い相関を示す. つまり対馬暖流の北上に伴う温度低下とα値の低下とは正の相関がある. 同様の傾向はメキシコ湾流の影響を受ける北米東岸でも認められる.
4) 以上の事から, 表層堆積物中の渦鞭毛藻シストの種多様性は, 表層海水温と関連しており, それはつまるところ渦鞭毛藻の游泳体の分布を反映したものである.

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