日本臨床細胞学会雑誌
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卵巣甲状腺腫の1例
安田 允天野 信人落合 和彦吉川 充芳岡 三伊乾 裕昭徳留 省悟森本 紀寺島 芳輝蜂屋 祥一
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1981 年 20 巻 3 号 p. 578-582

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抄録

卵巣甲状腺腫は極めて稀な疾患であり, 日本産婦人科学会卵巣腫瘍登録委員会の統計によれば過去15年間26, 862例中26例, 0.09%の頻度を示すに過ぎず, 本腫瘍の細胞診所見に関する報告は筆者らの調べた範囲では見い出せなかった.
最近, 腹水を多量に伴った本腫瘍を経験したのでその細胞診について報告する.
症例は49歳主婦で腹部膨満感を主訴に来院, 手術を行った. 腫瘍は左卵巣より発生, 大きさはオレンヂ大で腹水は約1, 500m1貯留していた.
病理組織所見: 腫瘍割面は約1/3が嚢胞部で残余は充実性であった. 充実部のほとんどは正常甲状腺組織に極めて類似した腫瘍細胞で占められていた.
細胞診所見: 腫瘍細胞は円形で大型の細胞質を有し, 散在性に出現する細胞と, 比較的少量の細胞質で小型の核を有し蜂巣状構造を示す細胞の2種類が観察された. 大型細胞は濾胞内細胞で, 小型細胞は濾胞上皮を形成している細胞と推定され, 腹水細胞診からも, 卵巣甲状腺腫であると診断しうる可能性が示唆された.

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