2023 年 54 巻 4 号 p. 235-244
微細藻類イカダモ(Scenedesmus sp.)は食品や畜産飼料としての活用が期待されており,大量培養時に細胞の健康状態を含めた培養状況を簡易に判別できる技術が求められている.本グループではイカダモが発する“におい物質”を利用した判別技術である“においセンシング培養(Odor Sensing Cultivation:OSC)”の開発を進めている.本研究では,イカダモ培養液から放散される“においの変化”を,嗅覚官能評価および化学分析によって経時的に追跡することを目的とした.嗅覚官能評価では,クロロフィル蛍光値相対値とにおい指数相対値の経時的変化に相関関係がみられた.また感知された“甘みのある”というにおいの印象はイカダモの細胞分裂活性の高さを示しており,イカダモの健康状態の指標物質として利用可能であると考えられた.GC-MSノンターゲット分析で検出された7種のVOCsは収穫適期を示しており,可搬型GC-MSや匂いセンサー等による状態判別の指標物質として利用できる可能が示唆された.