日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
間接抗グロブリン試験に際しモノクローナル抗ヒトIgG試薬が有用であった抗JMH保有症例
小川 公代永濱 景子志賀 達哉丸橋 隆行横濱 章彦
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2018 年 64 巻 1 号 p. 66-71

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抄録

抗JMH保有患者の不規則抗体検査に際しては,共存する抗体の判別が困難な上,交差適合試験も不適合となり,輸血への対応に苦慮する.抗JMH保有患者の交差適合試験に際し,臨床的意義がないとされているサブクラスIgG4を検出しないモノクローナル抗ヒトIgG試薬を用いることで,有益で臨床側が安心できる検査結果を提供し得た事例を報告する.

患者は82歳男性.間接抗グロブリン試験(IAT)による不規則抗体検査において,パネル赤血球全てに強陽性,自己対照は弱陽性であった.血液センターへ精査依頼し抗JMHと同定された.フローサイトメトリーによるIgGサブクラス解析でIgG4と判定した.IATによる交差適合試験では,ポリクローナル抗ヒトIgG試薬では陽性を示したが,モノクローナル抗IgG試薬では陰性であった.モノクローナル抗IgG試薬による検査結果を基に輸血を施行,期待した輸血効果が得られ,溶血性副作用を認めなかった.

IgG4を検出しないモノクローナル抗IgG試薬は,抗JMH保有患者の輸血後の同種抗体産生を確認する際に,またより安全で臨床側が安心できる交差適合試験結果報告のために有用であると考えられる.

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© 2018 日本輸血・細胞治療学会
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