2022 年 83 巻 4 号 p. 722-726
症例は60歳,男性.45歳時に濾胞性リンパ腫を発症して複数回の化学療法により寛解と再燃を繰り返し,続発性γグロブリン血症を合併していた.経過観察中のCTで終末回腸の壁肥厚と回盲部周囲のリンパ節の腫大を認め,悪性リンパ腫の再発診断のもと,化学療法を再開した.治療開始後の5日目に腹痛を発症し,CTで上行結腸回腸瘻,消化管穿通と診断した.術前に消化管穿通に対しての抗菌薬の投与・γグロブリン製剤を追加投与,化学的腸管処置としての抗菌薬の投与を行った後に,開腹結腸右半切除術を施行した.創部の閉創は抗菌剤配合糸を使用し,創部の洗浄を行った.術後は抗菌薬・γグロブリン製剤の投与などを行うことで,術後の感染症を含む合併症を起こすことなく軽快し退院した.術後高率に重篤な感染性合併症をきたしやすい低γグロブリン血症に対して,適切な周術期の抗菌薬・γグロブリン製剤の追加投与などを行うことで安全に周術期管理をし得ると思われた.