2019 年 33 巻 2 号 p. 187-193
48歳男性.咳嗽・胸痛・嚥下困難を認め,胸部CTで右S2の4 cmの腫瘤は右下部気管傍リンパ節(#4R)及び気管分岐下リンパ節(#7)と一塊となり,食道浸潤が疑われた.右肺扁平上皮癌(c-T4N2M0 stage IIIB)に対し,根治的化学放射線療法(66 Gy)が開始されるも,26 Gy照射中に発熱し気管食道瘻を認めた.当科へ紹介となり気管管状切除を伴う右肺全摘除及び食道合併切除,頸部食道瘻造設,腸瘻造設を施行した.術後両側反回神経麻痺を認めたが全身状態は改善し,27病日に軽快退院となる.術後3ヵ月で2期的に胸骨後経路胃挙上術を施行した.リハビリテーションにより両側反回神経麻痺は改善し経口摂取も可能となり初回術後より8ヵ月が経過した.根治的化学放射線療法施行中の気管食道瘻は難治性の重篤な合併症であるが,病巣の進展範囲により外科的介入は救済治療戦略の一つとなり得る.