2017 年 58 巻 3 号 p. 183-190
症例は68歳,男性.発症1年前に腹腔鏡下肝生検にて原発性胆汁性胆管炎(PBC)と診断,以後ウルソデオキシコール酸(UDCA)600 mg,ベザフィブラート200 mg内服により経過観察していた.経過中,発熱と全身倦怠感が出現.黄疸と肝酵素上昇も認めたため,PBCの進展が疑われ当科紹介入院した.海外渡航歴,明らかな生肉の摂取歴は無かった.入院時の血液検査にて肝障害と異型リンパ球を認め,ウイルス性肝炎の合併を考え,補液,肝庇護剤にて経過観察としたところ,黄疸はやや遷延したものの改善を認めた.退院後IgA-HEV抗体陽性であることが判明し,PBCにE型急性肝炎の合併したものと考えられた.HEV genotypeは3(3b)型であった.慢性肝疾患の経過中に肝機能障害を認めた場合,慢性肝疾患の増悪だけではなく,ウイルス性肝炎等の他の肝疾患の合併も考慮する必要があると考えられた.