日本気管食道科学会会報
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原著
頸部食道癌に対する手術治療―喉頭温存を目指した手術戦略
中島 康晃川田 研郎東海林 裕宮脇 豊岡田 卓也了徳寺 大郎藤原 直人齋藤 賢将藤原 尚志小郷 泰一奥田 将史松井 俊大永井 鑑河野 辰幸
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2014 年 65 巻 6 号 p. 447-456

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抄録

頸部食道癌治療において咽頭・喉頭機能の温存は重要な要素となる。当科では切除可能頸部食道癌症例に対し,病変口側が食道入口部直下に及ぶ場合でも喉頭温存を目指した手術を行い,良好な成績をえてきた。その手術手技は頸部食道口側端の確保,吻合のためのワーキング・スペースを確保するための工夫であり,気管を咽喉頭ごと腹側に牽引・挙上する気管挙上法,そして甲状軟骨を中心に咽喉頭を反時計回りに90度以上回転させる喉頭回転法を併用した手術である。今回,本術式にて手術を行った7例を対象に検討を行った。食道入口部から病変口側までの距離は平均0.6 cmで,2例は病変口側が食道入口部より口側に及んでいた。声帯麻痺は片側が6例,両側が1例に認められたが,一時的であった。軽度の誤嚥性肺炎,嚥下障害は認められたが,重篤な合併症は経験されていない。観察期間は中央値881日であるが,喉頭温存に起因する再発は認めていない。本術式では咽頭後壁への浸潤であれば食道入口部よりも口側へ伸展する病変でも喉頭温存が可能であり,治療選択肢を拡げ,頸部食道癌治療成績向上に貢献しうる。今後は嚥下機能にも配慮した術式,再建法の工夫が必要である。

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