2021 年 77 巻 2 号 p. I_1441-I_1446
豪雨災害時に発生する主な人的被害要因の一つに車中死がある.これまでに車両流失条件に関する実験的研究が多くあるものの,実被災事例の研究は限定的である.本研究では,令和元年東日本台風により発生した車中死事例を対象に,車中死発生時の洪水氾濫状況や車両流失条件を解明するために,旗川流域にて河川流・氾濫流シミュレーションを実施した.その結果,氾濫流は越水地点から南西方向に進み,車中死被害地点にて急激な流速・水深増加が確認された.また,同地点では,車両流失評価指標が0となる時刻が実際の被災データとほぼ一致した.また,車両流失危険マップを作製したところ,車両流失地点は限定的であり,扇状地の地形や鉄道盛土等の影響を受けた浸水深分布と概ね一致する結果となった.