2020 年 76 巻 2 号 p. I_769-I_774
令和元年台風19号は東日本の広い範囲に甚大な洪水被害を及ぼした.荒川水系では,支川の計7箇所の堤防決壊に伴う広範囲に及ぶ浸水被害が生じ,荒川本川においても氾濫危険度は高い状態であった.本研究では,氾濫域における現地観測を行い,これに基づく解析をしたところ,荒川流域における浸水面積は25.9km2,氾濫水量は約3100万m3であった.また,越水氾濫が生じなかった荒川本川において,氾濫が生じ得た可能性を検証するため,実績降雨データ及びアンサンブル予測降雨データを用いて,流出解析及び河川流解析を行い,得られた河川水位縦断分布に基づく氾濫リスクの評価を行った.その結果,荒川本川では,計画高水位を長時間超過する区間が多く存在し,超過時間は最大14時間になることが確認されており,高い氾濫リスクが存在したことが示唆された.