分析化学
Print ISSN : 0525-1931
イオンクロマトグラフィーによる雨水中の亜硫酸イオンの定量
田中 茂山中 一夫佐藤 滋橋本 芳一
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1986 年 35 巻 5 号 p. 465-470

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抄録

イオンクロマトグラフィーを用いて,雨水中の亜硫酸イオンの定量を行う方法について検討した.雨水中の亜硫酸イオンは,鉄(III),マンガン(II)などの溶存金属イオンの触媒作用により,極めて迅速に酸化されるため,雨水中の亜硫酸イオンを定量することは困難であった.そこで,鉄(III),マンガン(II)イオンのマスキング剤としてトリエタノールアミン(TEA)及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いて,雨水中の亜硫酸イオンを安定に保つことを検討した.その結果,TEAを雨水試料溶液に添加した場合,酸性領域では亜硫酸イオンの酸化防止の効果は認められなかったが,アルカリ性領域の場合,2.5mMの濃度となるように添加することで,1週間以上雨水中の亜硫酸イオンを安定に保つことができた.溶離液には,亜硫酸イオンと硝酸イオンの分離を良くするため,2mM炭酸ナトリウム/4mM炭酸水素ナトリウムを使用した.約11分で雨水中の亜硫酸イオンのほか,塩化物,硝酸,硫酸の各イオンを,十分精度良く定量することが可能であった.又,本法による亜硫酸イオンの検出限界は,試料注入量100μlの場合0.03ppmであった.本法により,1985年5,6月の横浜市における雨水中の亜硫酸イオン濃度は,0.07~1.8ppmであった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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