透析MBDアウトカム研究は日本全国の大規模透析施設が参加した二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を合併する血液透析患者を対象とした多施設共同の前向き観察研究である.今回は本研究参加施設のうち,研究開始時および終了時の診療方針アンケート調査に回答した79施設の結果報告である.本報告では2006年に発表された「透析患者におけるSHPT治療ガイドライン」(ガイドライン)の管理目標達成率を中心に両調査を比較検討し,診療方針や実際の治療に与えた影響について述べる.血清補正Ca濃度,血清P濃度および血清iPTH濃度の管理目標値をガイドラインの管理目標範囲内に設定している施設は,開始時は各々60.0%,71.8%,54.1%,終了時は各々59.5%,73.4%,57.0%であった.血清P濃度をガイドライン管理目標上限値6.0 mg/dLよりも低く設定している施設は開始時26.6%から終了時35.4%と増加した.一方,血清iPTH濃度では,ガイドライン管理目標上限値180 pg/mLよりも高く設定している施設は,開始時34.2%から終了時29.1%に減少した.また,平均血清iPTH濃度は,開始時328 pg/mLから終了時225 pg/mLと低下し,180 pg/mLを超えている患者割合も82.5%から47.1%と大きく減少した.さらに,ガイドライン管理目標達成率は,14.7%から42.2%へと有意に上昇した(p<0.001).本調査結果より,研究参加施設でのCKD-MBD管理を中心とした診療方針と治療の実態が確認され,ガイドラインが広く浸透していることが示された.新たなCKD-MBD関連薬剤による治療管理への影響も示唆され,将来的にはエビデンスが構築され,CKD-MBD診療ガイドラインの更新・改定へ反映されていくことを期待したい.