日本泌尿器科學會雑誌
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前立腺の酸フォスファターゼに関する免疫組織化学的研究
吉田 正林三木 誠
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1983 年 74 巻 4 号 p. 514-522

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抄録

前立腺癌患者では, 血清中の前立腺性酸フォスターゼ (PAP) が上昇する. その病態の一端を解明するため, 前立腺組織を中心に, PAPの局在に関する免疫組織化学的な研究を行つた.
臨床例から得られた56例の前立腺組織を対象に, 精製PAPに対する抗ヒトPAP家兎血清を用い, 蛍光抗体間接法により前立腺組織中のPAP局在を検索した. 対照として, 従来のアゾ色素法による酸フォスファターゼの酵素組織化学的検索も行つた.
得られた成績は次の通りである.
1. 前立腺組織中のPAPの検出は, 免疫組織化学的研究法が, 酵素組織化学的方法よりもより特異性を示した.
2. 正常前立腺を含む前立腺組織56例全例において, PAPに対する特異蛍光は, 前立腺上皮細胞内, 腺腔内分泌物および前立腺癌細胞内にび慢性に認められた.
3. 前立腺肥大症31例では, 組織型に関係なく腺上皮, 特に腺腔に面した腺上皮細胞胞体内に特異蛍光が認められた.
4. 未治療前立腺癌18例では, 前立腺肥大症に比べ1視野あたりでも, また個々の細胞あたりでも特異蛍光が弱い傾向を示した. また癌細胞の分化度の高さと1視野あたりの特異蛍光の強さに, 相関傾向が認められた.
5. 以上の結果から, PAPは前立腺上皮細胞に存在し, 腺腔内に排泄されるが, 前立腺癌では組織構築の破壊と乱れによつて, 血中PAPの上昇を来すものと考えられた.

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