日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
腹水中に癌細胞が出現した腹膜播種を伴った肝細胞癌の1例
小野寺 博義桑島 一郎武田 鐵太郎小室 邦子大沼 眞喜子村田 孝次佐藤 裕美子長谷 とみよ
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 32 巻 1 号 p. 67-71

詳細
抄録

腹水中に多数の癌細胞が出現した, 腹膜播種を伴った肝細胞癌の1例を経験したので報告する. 症例は68歳, 女性. 肝硬変で外来通院中に肝細胞癌が発見され, 肝動脈塞栓術を実施. 治療後は外来で経過観察をしていたが, 再発と思われる新たな結節が出現したために再治療を目的に入院. 入院直後から腹水が貯留し, 状態が増悪し死亡した.
腹水は黄色でやや白濁しており, 漿液性であった. 腹水中には核が大きく, 核は偏在し, 核形不整が著明, 核の大小不同, 巨大な核小体もみられ, クロマチンが顆粒状でN/C比大な大型の癌細胞がみられ, なかには多核の巨細胞もみられた. 細胞質は重厚なライトグリーンに均一に染まるものと, レース状あるいは泡沫状のものがみられた. 剖検の結果, 原発巣に残存していた癌細胞と腹膜播種の結節にみられた癌細胞は腹水中にみられた癌細胞と類似していたことから, 低分化の肝細胞癌の細胞が腹水中に出現したものと考えられた. 本症例の腹水中の癌細胞をprospectiveに診断するには, 他臓器原発の癌細胞の除外診断が必要であった.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top