ハンセン病の起因病原体であるらい菌は1873年に発見されて以来、数多くの研究が為されて来たが、人工培地上での培養の困難さ故に数々の困難をも経験して来た。ハンセン病の研究は、その困難を解消するために同じMycobacterium属菌によって引き起こされる結核の研究により得られた知識を取り入れながら進歩してきたものといえる。らい菌の薬剤耐性獲得機序の分子生物学的研究を例にとると、リファンピシン耐性ならびにキノロン耐性には、それぞれRNA合成酵素βサブユニットをコードする遺伝子ならびにDNAジャイレースのAサブユニットをコードする遺伝子上の変異が重要である事が明らかとなっているが、これらは、結核研究で得られた情報を基にしてハンセン病研究が進められた結果である。今後もハンセン病研究は、結核研究の最新のトピックから多くの事を学び重要な情報を得てゆく必要があるものと考えられる。