日本輸血細胞治療学会誌
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症例報告
抗Kpcにより溶血性輸血副作用を呈した1症例
石橋 美由紀長谷川 智子山下 香奈子石井 謙一郎伊藤 幸子堀口 新悟岡田 亜由美飛内 英里影山 有美子古川 悠太早川 修司上村 朋子加藤 陽子田﨑 哲典
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2018 年 64 巻 6 号 p. 773-777

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抄録

低頻度抗原に対する抗体である抗Kpcによる輸血副作用の報告例は国内外において見当たらない.今回我々は抗Kpcを有した患者に対し,対応抗原陽性の輸血が行なわれ,著しい副作用を呈した症例を経験したので報告する.患者は50歳男性で27年来の慢性腎臓病であり,移植歴・輸血歴を有していた.透析時にRBC-LR4単位の輸血が行なわれ,翌日に血圧及びSpO2の低下,発熱とともに生化学検査で溶血を示唆する所見を認めた.院内及び東京都赤十字血液センターで精査の結果,患者血清中に抗Kpc,輸血された2本の製剤のうち1本からKpc抗原が検出された.一般に,低頻度抗原に対する抗体の多くは37℃より低温で反応するだけで臨床的意義は疑わしいとされているが,新生児溶血性貧血の報告もある.以上より,低頻度抗原に対する抗体による輸血副作用は極めてまれとはいえ,必ずしも軽視すべきではないと考える.

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© 2018 日本輸血・細胞治療学会
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