日本畜産学会報
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技術報告
ルーメンバイパスメチオニン製剤の利用による乳生産の効率化と窒素排泄量の低減
足立 憲隆宇田 三男小林 宏子阿部 正彦富田 道則稲葉 満林 登藤井 清和瀬尾 哲則野中 敏道清水 正裕野中 最子寺田 文典
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2003 年 74 巻 3 号 p. 397-405

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抄録

ルーメンバイパスメチオニン製剤の飼料添加が乳牛の産乳,繁殖および窒素排泄に及ぼす影響について,2年間で延べ81頭のホルスタイン種乳牛(2産以上,平均産次3.6産)を供試して分娩前4週から分娩後14週までとする飼養試験により検討した.対照区の飼料はチモシー乾草,ヘイキューブおよび配合飼料の混合飼料(TMR ; 設計値 粗タンパク質(CP)16.0%,非分解性タンパク質率35.1%,可消化養分総量(TDN)74.9%)を用い,メチオニン添加区(以下メチオニン区と略)は対照区飼料にDLメチオニン67%製剤を1日20g添加した.1年次(実験1)は飼料中CP含量が14.9%と設計値よりも低く,このため両区ともCP摂取量が少なくなったが,乳量および乳タンパク質量はメチオニン区が多く(P<0.01),添加効果が示された.2年次(実験2)の飼料中CP含量は16.0%と設計値どおりであり,飼養成績においては乳タンパク質率がメチオニン区でやや高かったほかに有意な差はなかった.摂取量から乳中移行量を差し引いて求めた糞尿中窒素排泄量は飼料中CP含量が低かった1年次の方が2年次に比べて72g少なかった.血漿中メチオニン濃度は,メチオニン添加により有意に上昇したが,その他の血液成分に差はなく,繁殖に及ぼす効果も明らかではなかった.以上のことから,ルーメンバイパスメチオニン製剤の適切な活用により,乳生産の効率化と低タンパク質飼料の利用による窒素排泄量低減の可能性が示された.

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© 2003 公益社団法人 日本畜産学会
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