2021 年 77 巻 2 号 p. I_457-I_462
令和2年7月豪雨により,球磨川流域では死者50名を数える甚大な被害となった.本研究では,球磨川流域を対象に,洪水氾濫・建物被害状況や人的被害状況の関係性を明らかにすることを目的とする.そのため,現地調査や情報収集,データ解析を行い,流域全体の浸水深・建物被災状況を整理すると共に,人的被害発生情報と比較・検討した.その結果,建物被害は狭隘な中流域や上流域52kp~55kpで顕著であり,水平避難が遅れていればさらなる人的被害に繋がった可能性が示唆された.人的被害は,2階建ての2階で犠牲になる事例や家屋流失による事例など垂直避難が通用しないものも確認された.また,浸水開始は日の出以降が多かったが逃げ遅れが生じており,就寝前に早期の避難行動の呼びかけが必要であった.