日本薬理学雑誌
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ラット胃粘膜に対するGABA誘導体(Baclofen)の潰瘍惹起作用
原 信行原 洋一夏目 康弘後藤 義明
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1990 年 96 巻 4 号 p. 163-168

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抄録

GABAの脂溶性誘導体であるbaclofenの潰瘍惹起作用と体温との関係をラットを用いて検討した.ウレタン麻酔下で体温を低下(28~30°C)させたラットにおいてbaclofenは2,4および8mg!kg,s.c.投与により用量依存的な胃潰瘍惹起作用を示した.また高用量の8mg/kg,s.c.投与群では十二指腸においても高率に潰瘍性病変が発生した.しかしながら,正常体温(37~38°C)に保ったラットにおいてはbaclofenは8mg/kg,s.c.によっても潰瘍惹起作用を示さなかった.一方,baclofen8mg/kg,s.c.と同等の酸分泌刺激効果を有するhistamine30mg/kg,s.c.は低体温ラットにおいても正常体温ラットにおいても同程度に胃潰瘍を発生させ,体温との関係は認められなかった.以上の結果は,GABA誘導体がラットの消化管に潰瘍を惹起させ,しかも,その作用が体温調節機構と密接に関連することを示しており,水浸拘束や寒冷暴露といった体温低下処置による実験潰瘍の成因を研究する上で重要な手掛かりを与えるものと考えられる.

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