In:
Journal of Applied Ecology, Wiley, Vol. 59, No. 8 ( 2022-08), p. 1997-2009
Abstract:
生息地の分断化は, 生物多様性に対する大きな脅威となっている.特に, 河川のような線状につながる生息地は, 分断化の影響を受けやすい.人間活動による景観への影響が甚大になる中, 分断化された生息地パッチの保全価値は軽視できないものになっている.分断化されたパッチにおける個体群の存続や絶滅の人口学的メカニズムを理解することは重要な課題である. 本研究では, 治山ダムにより本流部が著しく分断化された源流域に30年以上の間存続し, 本流とその支流からなる空間構造をもつイワナおよびアマゴ個体群において, その動態を調査した.9年間の標存再捕データを用いて, 空間的個体群推移行列モデルの構築と分析を行った. 支流は本流と比べて複数の生活史段階で高い生存率を示し, また個体の移動は支流から本流方向に偏った非対称性を示した.その結果, 支流(幅2m)は, 水面面積にして調査水系の12%または18%しか占めていないにもかかわらず, 両種とも本流よりも高い個体群増加率( λ )を示した.このことは, 空間的に構造化された2種のサケ科魚類個体群の動態を規定する要因として, 生息地パッチのサイズよりも, 生息地パッチの質がより重要であることを示している. 水系内における支流の位置は, これらの個体群の変遷において重要な意味をもっていた.上流に分布するイワナでは, 高度に分断された(500 m未満の流程に6つの遡上障壁がある)本流パッチでも, 支流を含む上流域からの移入により個体群が存続した.一方, 下流に分布するアマゴでは, 分断された本流パッチの個体群増加率が移出個体の損失を考慮したあとでは1を下回ったことから, 最上流部の本流パッチから徐々に局所絶滅が進行した. 総括および応用.小支流は, イワナにおいては地域個体群を絶滅から救い, アマゴにおいては少なくとも絶滅を遅らせていると結論づけられた.生物の生息地としての源流域の法的保護は世界的に脆弱である.本研究の結果から, 小支流の人口学的価値を過小評価する河川管理計画は, 源流域に生息する 種の個体群を保全できず, 水圏の生物多様性を危機にさらす可能性が高いことが示唆される.考察では, 生息地の連結性および水産資源管理策に関連して, 本研究の保全学的意義が議論された.
Type of Medium:
Online Resource
ISSN:
0021-8901
,
1365-2664
DOI:
10.1111/1365-2664.14200
Language:
English
Publisher:
Wiley
Publication Date:
2022
detail.hit.zdb_id:
2020408-5
detail.hit.zdb_id:
410405-5
SSG:
12
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